
治療が必要な低身長の種類
医療的な治療が必要な低身長の種類とは何でしょうか。
低身長とは、同年齢の子供の100人中2番目に低い子よりも低いという状態を示し
ます。
低身長になる原因とは、必要な栄養を十分に取得していないという場合があります。
小食や好き嫌いなどで、しっかり食事をとっていないということです。
しかし、体の異常が原因で背が伸びない場合があります。
体の病気が原因で低身長となる病気は、以下のものがあります。
①成長ホルモンの分泌が不足している
子供の成長を促す働きをする成長ホルモンが正しく分泌されていない場合です。
成長ホルモンは、脳の下垂体の指令で分泌されるものですが、脳自体に異常がある
ことが原因で、分泌されない場合があります。
②甲状腺ホルモンの分泌が不足している
成長ホルモンと同じく骨の成長を促す働きをする甲状腺ホルモンが正しく分泌されて
いないことによるものです。
③骨に異常がある
骨の軟骨細胞が増えにくいという障害です。
「軟骨異栄養症」という手足の短い四肢短縮型の低身長となります。
1万人に0.5人~1.5人の割合で発症します。
④染色体の先天的な異常
先天的に染色体に異常がある場合です。
・ターナー症候群
X染色体に欠損が見られるもので、卵巣の発育が悪くなる症状があり思春期がなく、低身長になったり、
心臓病や難聴などの合併症が起こる病気です。
2000人に1人の割合で女児に発症します。
・プラダー・ウィリー症候群
15番染色体の異常によるもので、低身長や性腺の発育不全などの症状があります。
また、肥満や発達障害などの症状がある場合もあります。
1万人に1人の割合で発症します。
⑤内臓疾患によるもの
心臓や肝臓、消化器の疾患が原因により低身長となる場合があります
子供の時に臓器に疾患があると、全身の栄養状態が悪くなります。
そのため、身長の伸びにも影響が出たりします
⑥子宮内での発育不全によるもの
母親の子宮内で十分に発育していないことが原因となるものです。
SGA性低身長症と呼ばれているものです
母親の子宮内で十分に発育しなかった結果、標準の身長、体重よりも
小さい赤ちゃんが生まれてしまいます。
未熟児と呼ばれている赤ちゃんです。
子供自体の体に異常があるわけではありません。
3歳くらいまでには、標準の身長、体重に戻ることが多いですが、まれに
身長が伸びず、低身長となってしまう子供がいます。
生まれてから十分な栄養を与えていないことが原因となっている場合が多い
ようです。
これらの体の病気が原因で低身長となっている場合は、医療機関での治療を
受けないといけません。
低身長の病気の治療方法
体に異常があって低身長となっている場合は、どのような治療を行うので
しょうか。
前項の病気のほとんどの場合には、成長ホルモンの投薬という治療を行い
ます。
成長ホルモンの治療では、「ヒト成長ホルモン製剤」という薬剤を注射で投薬
します。
ヒト成長ホルモン製剤は、脳下垂体から分泌されている成長ホルモンと同じ構造の
薬で、日本以外でも世界各国で使用されています。
成長ホルモンはタンパク質でできているので、飲み薬で補充すると、胃でアミノ酸に
分解されてしまい、効果が得られません。
そのため、成長ホルモンの投薬は注射器を使います。
注射する薬の量は、血液中のIGF-1濃度などを指標に、子供の体重をもとに
1週間ごとに算出されたものを、週6~7回に分けて投与します。
IGFとは、成長ホルモンによって肝臓などで作られる成長因子です。
本来、成長ホルモンは、毎日就寝している時に分泌されているホルモンですが、
1日経つと消失してしまいます。
そのため治療でも、まとめて投与することができず、ほぼ毎日、寝る前に自宅で注射を
することとなります。
注射する場所は、ふともも、お腹、上腕部などへ行います。
利用する注射は、針が非常に細いペン型の注射器となっています。
ある程度の年齢になれば、お子さんが自分で打つこともできます。
その他の治療としては、甲状腺ホルモンの不足が深刻な場合は、甲状腺ホルモンを投薬
する治療を行います。
また、軟骨異栄養症による「軟骨無形成症」「軟骨低形成症」の場合は、骨延長手術と
いう骨を接ぎたす手術が行われることがあります。
また、「ターナー症候群」では女性ホルモンの投与などが行われます。
治療の期間
成長ホルモンを投薬する知慮は、いつまで行う必要があるのでしょうか。
成長ホルモンの分泌不足が原因で低身長症となっている場合は、成長ホルモンの投薬を
始めると最初の1年間で急速に身長が伸びてきます。
しかしその後、伸び幅は緩やかになりますが、治療を続けていくことで標準身長に近づく
ことができるようです。
人の身長の伸びは、思春期を迎えると止まってしまいます。
身長が伸びるのは、骨の端にある「骨端線」と呼ばれる部分が成長しているからです。
この骨端線が閉鎖してしまうと、骨の成長が無くなり、身長の伸びは止まってしまう
のです。
成長ホルモンの投薬の治療も思春期が終わる18歳ころまで行います。
治療の開始時期は、3歳以上のできるだけ早い時期から始めれば効果が上がります。
よって長期間に及ぶ治療となってしまうのです。
成長ホルモンの製剤は非常に高価な薬です。
1年間投薬すると、何百万円もかかることもあるそうです。
保険の適用や自治体の補助の制度があるので、利用すればよいでしょう。
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